俳句を始めて10年。でも、はっきり言って僕はまだまだ初心者です。
一時は「麦」という俳句結社の同人ということになっていましたが、実は、俳句がどん
なものなのかよく分からないんです。でも別に分かろうなんて思いません。
思ったこと、感じたこと、閃いたことをそのまま読めばいいんじゃないかって思うんです。
先輩方には怒られるかもしれませんが、たかが俳句。言葉と感性のお遊びだ
と思って、いっしょに楽しみましょう。
1998年9月 青椒牛肉糸
右側は地図にない道今朝の秋
八月は「青椒牛肉糸」大盛りで
十六夜や不随意運動微調整
野分後肺活量は1000少し
秋天に立てかけてある砕石場
新刊の推理小説濁り酒
真っ直ぐに車椅子漕ぐ星月夜
初めてのキスもまだです小望月
長き夜は頭良くなる薬飲む
足音に追いかけられる十三夜
3月 メダルラッシュ
つい舌を噛んでしまって凍ゆるむ
虫出しの雷や人体解剖図
「金さん」がもろ肌脱いで山笑う
見るからに不器用な奴春の土
屋根裏に登りたくなる春休み
世界地図ひろげ春昼連れてくる
赤潮が発生妙に腹が減る
金銀銅メダルラッシュだ地虫出づ
ポケットのコインを集め鳥雲に
春夕焼スプーン曲げが出来そうだ
1997年8月 「テツ」という呼び名
「テツ」という呼び名が好きで夏盛り
日の盛おもちゃ寝たまま座ったまま
ユンボーのレンタル期限油照り
大旱黄色の絵の具塗りたくる
夕凪や禁酒禁煙誓います
たばこ屋のばあさんの皺夕焼けて
アラブ語の辞書の字の赤熱帯夜
居間で寝る母の寝顔や夜の秋
スプレーの赤い落書き晩夏光
夏の果まだまた遊び足りなくて
7月 「いらだち」
緑陰がコレステロール流し去る
短冊に家内安全梅雨明ける
ごきぶりやマルチメディアの0と1
高齢化社会と言えど風鈴鳴る
躍り寝の男六人熱帯夜
扇風機自分の心読めなくて
いらだちを隠そうとして白団扇
信号の音鳴り止まぬ極暑かな
国道の昼のサイレン風死せり
夏深きサイドミラーの赤信号
6月 「山崩し」
省エネの題目唱え冷奴
不器用に言い訳をしてコーラ飲む
まとまりに欠ける絵ばかりソーダ水
ソーダ水寮母の声にドキッとする
翳み目の目薬よりも夏料理
パソコンに夢中の途中ゼリー食う
グラビアのグラビアクィーンところてん
浴衣着てシルバーシート空いている
浴衣着てちょっとコンビニ寄ってゆこう
国会は分からんところアロハシャツ
5月 「山崩し」
「山崩し」のカチッという音水温む
幸せをつかみに行こう初燕
夜桜の寮母女となりにけり
忘れ物したこと忘れシャボン玉
春の昼おいしい紅茶飲みたいね
道順の赤い矢印華鬘咲く
春愁やケンケンパーのアスファルト
滑り台の上でしゃがめば春深む
夏近し初めて手にする母子手帳
木登りの子ども発見夏が来た
4月 麻酔
待ち伏せのふりをしている蕗の薹
NTTの料金値下げ地虫出づ
一人より二人がいいね弥生来る
卵型の車が走る春の昼
春の雨いつも唇濡れてる君
目立つ人目立たない人春の雷
クラッカーとチーズとワイン春の宵
観潮や地位も名誉もシャツ一枚
退屈を飼い慣らしてる春の昼
麻酔科のドクター走る日永かな
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