みんなヒーローだった

「'93 身体障害者スポーツ大会後夜祭にて」



 雨がまた降り始めた。大会の全ての競技が終わるのを見計らうように降り始め、その後何度となく降ったり止んだりを繰り返していた雨が…。けれど不思議と寒さは感じなかった。体の底の炬火は、まだ燃え続けているようなのだ。

 僕だけではない。どの選手も、コンパニオンもボランティアの人たちも、みんなそうだ。自信と満足感に溢れ、ほほえみが途切れることはない。体からは湯気が立ち上っている。それらがオーラのように光り輝いて見えた。みんなヒーローだった。

 そんな彼らが、あちらこちらでバカ騒ぎをしている。バカ騒ぎとは言葉が悪いかも知れないが、バカ騒ぎできるということは凄いことだと思う。障害者も健常者もいっしょになって、何の制約もなくバカ騒ぎができる空間。ここにこそノーマライゼーションの原点があるのかも知れない。そう思いながら彼らの横をすり抜け、一足先に選手団の控えのテントに向かった。

 雨は勢いを増すともなく、ただ降り続いていた。


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